
アプリの月額だけ見ていませんか — Shopify運用の「見えないコスト」の計算方法
アプリの月額を合計して「うちの運用コストはこれくらい」と見積もる。多くの現場がここで止まります。ところが請求書に載る金額は、実際に払っているコストの一部にすぎません。載らないコストのほうが、たいてい大きい。何が見えていないのか、どう数字にするのか——3つのコストを分けて、自社で試算できる形にほどいていきます。
まず、コストを3つに分ける
「Shopify運用のコスト」とひとまとめにすると、対策の打ちようがありません。見え方が違う3つに分けると、測り方も打ち手も変わります。
| コスト | 見え方 | どこに出るか |
|---|---|---|
| ① 金銭 | 可視 | アプリの月額請求・従量請求 |
| ② 工数 | 半可視(測れば見える) | 担当者の作業時間・人件費 |
| ③ 機会損失 | 不可視(推定するしかない) | 回せていない施策の逸失粗利 |
①は放っておいても請求書に出ます。②は測ろうとしないと出ません。③に至っては、そもそも「起きなかった売上」なので、意識して推定しにいかないと永遠に見えない。だから見積もりは①だけで終わり、②③が抜け落ちる。ここを埋めるのが、この記事の試算です。
コスト① 金銭 — アプリ月額と、その下の従量課金
一番わかりやすい層ですが、それでも取りこぼしがあります。月額の固定費だけを見て、従量課金を見落とすパターンです。
やることは棚卸しです。契約中のアプリを1行ずつ書き出し、次の観点で洗います。
- 固定の月額:各アプリのプラン料金。ドル建てなら為替も効く。
- 従量で増える分:配信量・連絡先数・SMS通数・API利用などで、使うほど上がる課金。メール/SMS系の配信ツールは、送る量や登録連絡先の数で階段状に上がる料金体系が一般的です(たとえば連絡先数のレンジで月額が段階的に変わる、送信超過分は別料金、といった形)。固定額だと思っていたら繁忙期に跳ねていた、は起こりえます。
- 重複:同じ機能を別々のアプリで二重に契約していないか。レビュー・ポイント・レポートあたりは重なりやすい。
- 休眠:入れたきり使っていないのに課金だけ続いているアプリ。
参考までに、一般的な相場感として、アプリを使うShopify店舗は珍しくなく、1店舗あたり平均で6個前後のアプリを併用しているという調査もあります。1アプリあたりの月額は数十ドル規模のものが多く、数個そろえば月あたり数十〜数百ドル程度になる、という桁感が語られることが多い。ただしこれは業種・規模で大きく振れる数字なので、必ず自社の請求書で確認してください。
コスト② 工数 — 手作業の時間に、人件費をかける
アプリ同士は、標準ではデータを共有しません。だから「アプリAの顧客に、アプリBの条件で施策を打つ」には、人が間に立ちます。CSVを書き出し、表計算で突き合わせ、集計し、レポートにする——この時間は請求書に出ませんが、人件費として確実に出ています。
測り方はシンプルです。どの作業に、月に何時間かかっているかを書き出し、時給をかける。厳密な工数管理をしていなくても、担当者に「あの集計、だいたい週どれくらい?」と聞けば、おおよその値は出ます。
対象になりやすい作業を挙げておきます。
- アプリをまたぐデータの抽出・エクスポート
- 表計算での転記・名寄せ・突き合わせ
- 施策結果の集計とレポート作成
- 複数の管理画面を行き来する確認作業
工数は、金銭と違って「減らせる実感」が出やすい層です。手作業が自動化で消えれば、その時間はまるごと戻ってくる。ただし後述するとおり、戻ってくる量には上限があります。手作業がゼロになれば、それ以上は削れない。
コスト③ 機会損失 — ここは慎重に、幅で捉える
3つ目は、性質が違います。①②は「今払っているもの」を数える話でしたが、③は「起きなかったこと」を推定する話です。データが分断されていて回せていない施策——カゴ落ちの掘り起こし、休眠顧客の再アプローチ、再入荷通知の連動——が、本来なら生んだはずの粗利。これが機会損失です。
先に注意を。ここは推定の幅が一番大きい層で、断定できません。「やれば必ずこれだけ売れた」という数字は、誰にも出せない。だから機会損失は、金額を確定させる対象ではなく、「①②を足しただけでは全体を見誤る」ことを意識するための項目として置いてください。
それでも桁感を持ちたい場合の、考え方だけ示します。回収の粗利は、ざっくり「対象人数 × 反応率 × 客単価 × 粗利率」で表せます。
機会損失は、大きく見積もろうと思えばいくらでも大きくできてしまう層です。だからこそ、控えめに、幅で。稟議に載せるなら「保守側の下限」を主役にするくらいがちょうどいい。
3つを足す — 試算テンプレ
ここまでの3層を、1枚にまとめます。自社の数字を右列に入れれば、月あたりの概算が出ます。
| 層 | 計算 | あなたの数字(記入) |
|---|---|---|
| ① 金銭 | 月額固定費の合計 + 従量課金の月平均 | 円/月 |
| ② 工数 | 月の作業時間 × 時給 | 円/月 |
| ③ 機会損失 | 対象人数 × 反応率 × 客単価 × 粗利率(幅で) | 円/月(下限〜上限) |
| 合計 | ①+②+(③は幅) | 円/月 |
使い方の注意を3つ。
- ①②と③は性格が違う。①②は今出ている実コスト、③は推定。合計するときも③は幅のまま扱い、確定値のように足し込まない。
- すべて「試算」。ここで出るのは概算であって、削減が約束された額ではありません。
- 年額に引き伸ばさない誘惑に注意。月額に12を掛ければ数字は大きくなりますが、後述のとおり削れる分には上限があるため、単純な年額換算は過大になりがちです。
誠実な但し書き — 削れるコストには、上限がある
試算をすると、合計額がそこそこ大きく出ます。ここで一つ、正直に言っておきたいことがあります。
削減できるコスト(①金銭・②工数)には、有限の上限があります。重複アプリを解約すれば費用は減る。手作業を自動化すれば工数は消える。けれど、解約できるアプリは有限で、消せる手作業もゼロが下限です。つまり①②の削減効果は、数か月で「削り切る」性質のものです。最初の数か月で見えやすいのは、この費用・工数の削減。逆に言えば、そこから先は同じ削減額が毎月出続けるわけではありません。
一方、③の機会損失をどれだけ回収できるか——回せていなかった施策を回して粗利を積み増せるか——は、削減とは別の、継続的な価値の話です。こちらは上限が固定されておらず、運用を続けるほど積み上がる可能性がある。ただし未検証の推定であり、確約はできません。
なので、試算を稟議に使うときの姿勢はこうです。「有限の削減(数か月で枯れる)」と「継続的な価値(積み上がりうるが推定)」を分けて書く。両者を混ぜて「毎月これだけ得します」と大きな一つの数字にすると、数か月後に現実と合わなくなる。分けておけば、意思決定はむしろ通りやすくなります。
自社の実数値で試算したいとき
上のテンプレは、あなた自身で埋められる形にしてあります。それでも、従量課金の実額や手作業の時間を洗い出すのは、社内だけだと手間がかかることも多い。
当社の無料診断では、現状のアプリ・費用・業務・データ連携を一緒に棚卸しし、実際の数値に基づいた効果の試算を提示します。ここで大事にしているのは、見込めない場合は「見込めない」とお伝えすることです。どのストアにも効果が出ると請け合うことはしません。
試算の結果、どの方向へ進むのが妥当か——アプリを①厳選・整理するか、Klaviyoなどの②統合スイートに配信系をまとめるか、③運用基盤に寄せてストア側のデータまで横断して回すか——は、月商・担当人数・アプリ数で変わります。目安として、月商がおおむね1,000万円未満でアプリ数個なら①(配信が散らかっていれば②)で足りることが多く、月商1,000万円を超え、担当1〜2名でデータ分断による取りこぼしが痛み始めた段階が、②③を検討するラインです。試算した結果、いまは①の厳選・整理で十分だと分かることもあります。
この試算が「向かない」ケース(対象外の明示)
公平のために、この試算の枠組みが役に立ちにくい状況も挙げます。
- Shopifyをまだ使っていない、または運用データがほとんど溜まっていない段階。試算の材料(請求・作業実態・顧客データ)がそろわない。
- アプリが数個で、費用も把握できていて、手作業もほぼない場合。②③がそもそも小さく、試算しても差が出にくい。
- 業務プロセスを一切変えられない制約がある場合。コストが見えても、打ち手に移せない。
これらに当てはまるなら、無理に大がかりな試算をするより、まずは①の請求棚卸しから始めるほうが現実的です。
よくある質問
アプリの月額を合計するだけではダメですか?
スタート地点としては良い方法です。ただしそれで見えるのは①金銭の一部だけ。従量課金、②工数、③機会損失が抜けます。合計額を「運用コストの全体」と受け取ると、判断を誤りやすくなります。
機会損失(③)は、いくらと出せばいいですか?
一点の金額では出さないほうが安全です。反応率は施策・商材・タイミングで大きく振れるため、下限〜上限の幅で持ち、稟議には保守側の下限を主役に据えることをおすすめします。
試算した削減額は、そのまま毎月続きますか?
①②の削減は、数か月で削り切る性質のものです。同じ額が毎月出続ける前提で年額に引き伸ばすと、過大になります。継続的な価値は③の回収側にありますが、そちらは推定であり確約はできません。
効果はいつ、どの順で見えますか?
一般には、最初に見えやすいのは費用と工数(=削れる無駄)。売上や組織面の効果は、その後に現れる時間軸で捉えるのが現実的です。
自社の実数値で、コストを棚卸しする
現状のアプリ・費用・業務・データ連携を一緒に棚卸しし、実際の数値に基づく効果を試算します。見込めない場合はその旨をお伝えします(費用はかかりません)。
無料のEC運用診断を見るまとめ
- Shopify運用のコストは、①金銭・②工数・③機会損失の3層。アプリ月額の合計だけでは①の一部しか見えない。
- ①は請求書、②は作業時間×人件費で測る。③は推定の幅が大きく、慎重に、下限を主役に。
- 削れるコスト(①②)には上限があり数か月で枯れる。継続的な価値(③の回収)とは分けて書くのが、稟議でも誠実。
- テンプレは自社の数字を入れれば概算が出る形。すべて「試算」であり、削減や成果を保証するものではありません。
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- Stailor株式会社(Stailor inc.)
- 運営会社サイト
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- 最終更新
- 2026-07-27
本記事はEC運用の一般的な考え方と試算方法を解説するもので、記載の数値はすべて読者が自社の実数で置き換える試算例です。特定の削減額や成果を保証するものではありません。「Shopify」および「Shopify Flow」はShopify Inc.の商標・製品です。本サービスはShopify Inc.が提供・保証するものではありません。