
オンラインと実店舗の在庫、別々に数えていないか — 一元化の考え方と道筋
閉店後、店舗の売上を見ながらECの在庫数を手で直す。棚卸しのたびに数字が合わず、犯人探しで半日消える。ECで品切れ表示の商品が、店舗のバックヤードには積んである——。ECと実店舗を両方持つ事業では、この「在庫の二重帳簿」状態が珍しくありません。担当者の丁寧さでは解決しない構造の問題であり、放置すると人件費と売り逃しの両方で払い続けることになります。何が起きているのか、Shopifyの標準機能でどこまで解けるのか、道筋を整理します。
在庫の分断が生む3つのコスト
| コスト | 何が起きるか | 気づきにくい理由 |
|---|---|---|
| 手作業 | 毎日の在庫数の転記・突き合わせ・棚卸しの差異調査 | 「閉店後の30分」として日常に溶けている |
| 売り越し | 実在庫がないのに注文を受け、キャンセル・謝罪対応が発生 | 件数が少ないと「たまのミス」として処理される |
| 機会ロス | 店舗にはある商品がECで品切れ表示になり、売り逃す | 売れなかった注文は記録に残らない |
特に3つ目は、損失がどこにも記録されないのが厄介です。ECの品切れ表示を見て去った顧客は、数字に痕跡を残しません。在庫一元化の投資判断では、手作業の人件費だけでなく、この見えない売り逃しまで含めて考える必要があります(見えないコストの考え方は計算方法の記事で扱っています)。
Shopify標準機能でどこまでできるか
意外に知られていませんが、Shopifyは複数の保管場所(ロケーション)ごとに在庫を分けて管理する機能を標準で備えています。オンライン用倉庫・実店舗・イベント在庫などを場所として登録し、どの注文をどの場所の在庫から引き当てるかを管理できます。
さらに実店舗のレジをShopify POSにすると、店舗のレジ売上とECの注文が同じ商品データ・同じ在庫数を参照するようになり、「売れたら両方の在庫が自動で減る」一元管理が標準機能の範囲で成立します。実店舗が1〜数店舗で、レジの入れ替えに障害がなければ、これが最も構造がシンプルな解です。
既存のレジ・基幹システムを使い続ける場合
「レジは替えられない」「基幹システムに在庫の正がある」という事情がある場合は、既存システムとShopifyの在庫を同期する連携アプリ・連携開発が選択肢になります。この道を選ぶときの確認点は3つです。
- 同期の方向と頻度:どちらの数字が「正」で、何分おきに反映されるか(頻度が低いと、その間の売り越しリスクは残る)
- 例外の扱い:返品・取り置き・破損・店舗間移動が、同期にどう反映されるか
- 障害時の運用:同期が止まったとき、誰がどう気づき、手動運用に切り替えられるか
一元化までの3段階
- 在庫の「正」を決める:どのシステムの数字を正とするか。ここが曖昧なまま道具を入れると、二重帳簿が三重になるだけです
- 標準機能で寄せられるか検討する:ロケーション+POSで足りるなら、追加費用も分断も最小で済みます
- 寄せられない事情があるなら連携で同期する:上の3つの確認点を満たす連携を選び、例外運用をドキュメント化します
一元化した在庫データは、それ自体が施策の材料になります。「在庫が残っている商品の再入荷通知」「店舗在庫のある商品を近隣顧客に案内」のような在庫×顧客の横断シナリオは、在庫データが1か所にまとまって初めて組めるものです。一元化は業務効率の話で終わらず、打てる施策の幅を広げる投資でもあります。
よくある質問
在庫追跡とは何ですか?
Shopifyで商品ごとに「在庫数を数えて管理する」設定のことです。在庫追跡を有効にすると、売れるたびに在庫数が減り、ゼロになれば品切れ表示にできます。一元管理の前提となる基本設定です。
在庫切れでも販売を続けることはできますか?
できます。商品ごとに「在庫切れでも販売を続ける」設定があり、受注生産や取り寄せ商品に使われます。ただし実在庫と設定の不一致による売り越しの原因にもなるため、対象商品は絞って管理するのが安全です。
複数店舗でも一元管理できますか?
できます。ロケーションを店舗ごとに登録すれば、店舗別の在庫数をShopify上で分けて持てます(登録できる数は契約プランによって上限があります)。店舗間の在庫移動も記録できます。
棚卸しの数字が合わないのですが。
差異の原因は、同期のタイムラグ・例外処理(返品・破損・取り置き)の記録漏れ・手作業の転記ミスが典型です。差異そのものより「どの例外がどこに記録されるか」のルールを先に整えると、原因の特定が速くなります。
在庫まわりの手作業、月何時間かかっているか棚卸しする
在庫運用の現状(手作業・売り越し・品切れ表示の機会ロス)を一緒に棚卸しし、標準機能・連携・統合のどこまでが必要かを整理します(費用はかかりません)。
無料のEC運用診断を見るまとめ
- 在庫の分断は手作業・売り越し・記録に残らない機会ロスの3つのコストを生む。担当者の丁寧さでは解決しない構造の問題。
- Shopifyはロケーション機能+POSで、ECと実店舗の在庫一元管理が標準機能の範囲で成立する。既存システムを残す場合は、同期の方向・頻度・例外・障害時運用を確認して連携する。
- 順序は「正」を決める→標準機能で寄せる→ダメなら連携。一元化した在庫データは、在庫×顧客の横断施策の材料にもなる。
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- 最終更新
- 2026-07-30
本記事はEC運用の一般的な考え方を解説するもので、機能の仕様・プランごとの上限は変わることがあります。最新はShopify公式ヘルプをご確認ください。「Shopify」「Shopify POS」はShopify Inc.の商標・製品です。STAILOR HarnessはShopify Inc.が提供・保証するものではありません。